2006年08月23日

アンチエイジングコラム【14】~ロハスな時代背景

高度成長の時代というのは、1960、1970年代の頃を指すのでしょうか。工業化が進み、大量生産、大量消費で日本の国民は便利さと豊かさを手に入れることができました。世界中の先進諸国で同じような現象が起きていました。公害や環境汚染が大きな社会問題なったのもこの頃のことです。人びとのウォーキング時間も減ってきました。有機水銀による水俣病、四日市をはじめ石油コンビナート工場地帯の大気汚染による喘息、東京の光化学スモッグ、田子の浦のヘドロ公害、PCBによる水質汚染、酸性雨、六価クロムによる土壌汚染、赤潮による被害・…、これまではなかった現象です。

人間が健康に生きてゆくために必要なもの。それはきれいな空気と水、そして安全な食べ物です。健康な足腰があれば、好きなところへ行くことができます。農産物は安全な土壌と雨水から育まれ、魚にはきれいな海、川、湖が必要です。空気も水も土も汚れ果ててしまっては、そして足腰が弱ってしまっては、健康なハッピーライフが遠のいてしまうでしょう。

1990年代頃になり、国や大企業はようやく深刻な環境汚染の問題に対して、国際的に取り組むようになりました。企業人や研究者の間で、地球環境をいつくしみ、自然と向き合いながらその偉大なる恩恵を将来にわたり持続的に享受してゆこうという考えが芽生えてきました。宇宙船地球号の考え方あり、稀少動植物の絶滅を防ぐ種の多様性を守る運動あり、地球温暖化を防ぐためのCO2排出協定あり、有機減農薬運動あり、大なり小なりの様々な運動が地域や国や地球規模で行われるようになりました。

このような時代背景の中で、一般の人たちに何ができるのか、一般企業として何ができるのか。とにかく少しでも良いことを実践していこうという一人一人のライフスタイルが、LOHAS = Lifestyles of Health and Sustainabilityという名の下に集まってきたのだと思います。

健康長寿と生活の質(QOL;Quality Of Life)の向上が目的にアンチエイジングは基本的には医学であるので、ロハスという文化的ムーブメントまったくイコールというわけではありません。しかしアンチエイジング医療では生活習慣の改善の要素が多く、ロハスの目指すライフスタイルと共通する部分が多いのは確かです。

ウォーキングについては社団法人日本ウォーキング協会が中心に「歩け歩け運動」を推進しています。なんと言ってもウォーキングはCO2排出ゼロですから、車社会の見直しを含めウォーキングはとってもロハスです。また前回紹介した(NPO)ローハスクラブでは、①環境家計簿-暮らしのCO2チェック、②ロハス環境の森プロジェクト、③ロハスエコツーリズムをテーマに取り上げています。環境家計簿-暮らしのCO2チェックとは、地球温暖化の原因となるCO2の排出を、家庭で「環境家計簿」をつけて、草の根レベルでCO2排出量削減に協力しようというものです。ロハス環境の森プロジェクトとは、先ほどと同じくCO2排出量を減らすために、森林で植樹活動を行う運動です。ロハスエコツーリズムでは、国内外の森林や里山へのエコツアー、風力発電の見学や温泉療法の体験などを目指しています。これらの運動は環境医学の観点からも理にかなっているので、多くの人たちがこのような問題に関心を寄せ、限りある地球資源を守るためのライフスタイル改善運動に参画して欲しいと思います。
   同志社大学アンチエイジングリーサーチセンター教授
                  米井嘉一

2006年06月15日

アンチエイジングコラム【13】LOHAS(ロハス); Lifestyles Of Health And Sustainability

講演などで今まで来たことのなかった街に出かける機会が増えてきました。そんな時はできるだけ時間を作り、ウォーキングで街中を探索したりします。「ロハス」という言葉、最近よく見かけるようになりましたね。すると、ついつい「ロハスって何かな」「アンチエイジングとなにか関係あるのかな」と考えてしまうのです。

ロハスとは、英語「Lifestyles Of Health And Sustainability」の頭文字「LOHAS」をとってロハスと読んだ言葉。米国で生まれたマーケティイングのための造語です。意味としては、心と身体と地球環境にやさしいライフスタイルのことです。

一方、アンチエイジングとは、生活の質(QOL;Quality Of Life)の向上と健康長寿を目指すための予防医学です。アンチエイジング療法の基本はライフスタイルの改善にあります。

今回のシリーズでは、街角でぶらっと出会ったロハスな考え方、ライフスタイルを紹介するとともに、アンチエイジングが目指すライフスタイルと比較して、どの辺に共通点があり、どの辺が違うのか、考えてみたいと思います。
ロハスとアンチエイジングとの根本的な違いは、ロハスは民間伝承的に生まれた文化的ムーブメントですが、アンチエイジングが医学の一分野であることでしょう。従って、話の筋の流れとしては、ロハスの考え、ライフスタイルを紹介しながら、アンチエイジングの医学的観点か検証してゆくことにしましょう。

「いきいきロハスライフ!」の著者イデ・トシカズ氏は、ロハスを考える視点は消費者、生活者、投資家・企業家の3つがあると言っています。消費者の立場とは、オーガニックフードやスローフードを買う消費者が何を考え、何を求めるか、どのような行動をとるか、です。生活者の立場とは、ヨガや鍼灸、アロマテラピーといった代替医療を積極的に取り入れたりする健康志向のことです。投資家・企業家の立場とは、オーガニックフードやスローフードを生産する企業、環境にやさしいハイブリッドカーを作る車会社、CO2の排出抑制を真剣に取り組む企業グループであったりするわけです。それでも車会社、CO2の排出抑制がいくら頑張ったところで、ウォーキングにはかないません。空気を吸って呼吸して、代謝された結果のCO2は排出規制の対象にはなりません。ウォーキングはなんとCO2の排出ゼロなのです。

自分たちが良いと考え、実践しているもの、これからやろうとしていることなので、なんとなく良いことに見えます。良さそうだから良い、それも一理あるでしょうが、時には謙虚になって、本当に良いのかどうか、科学的に検証ししてみる必要はあるでしょう。

どのように検証するかについては、色々考えもあるでしょうが、ここは一つアンチエイジングの考え方と比較してみましょう。アンチエイジングの目標はQOLの向上と健康長寿ですから、「ロハスってこの目標に対して本当にいいの?」という疑問について考えるわけです。。

日本にはNPO法人ローハスクラブ(東京都中央区、会長浦田純一、http://www.lohasclub.org/)が設立されており、ロハス普及の中心を担っています。その活動趣旨は、健康ですこやかに暮らしたいと願う人々に対して、ロハス(環境と人間の健康を優先した持続可能な社会のあり方を模索する)という志向を普及・促進するために調査・研究および情報のネットワーク化に関する事業を行い、人々の健康や社会活動、経済、環境の保全に寄与することを目的とすることです。簡単に言えば、「意識を少し変えて、健康な生活を始めよう」ということ。次回から、ロハスについて、もう少し詳しく説明しましょう。

同志社大学アンチエイジングリーサーチセンター教授
米井嘉一

2006年05月19日

アンチエイジングコラム【12】 [-パルッセ日記]

大学の今出川キャンパスへ向かう途中、僕はよく京都御所を通り抜けます。4月に見事な花を見せてくれたしだれ桜も、今はすっかり普通の木のフリをしています。初夏の京都はとても気持ちがいいですね。御所の公園でイヌを散歩させているおじさんを見かけました。それもぶらぶらとした「イヌも歩けば棒にあたる」スタイルではなく、たったかたったかリズムよく「健康ウォークやってるぞ」という感じ。イヌもしり尾をピンと立て心なし得意げに歩いています

今年はイヌ年、年男の僕はペットのアンチエイジングの本を出版しました。あのおじさんのように愛犬と一緒にウォーキングするのは実に理想的なこととして取り上げています(『愛犬を元気で長生きさせる育て方』 PHP研究所刊)。
 人間での研究の結果、ウォーキングやエアロビクスなどの有酸素運動は、糖尿病などの生活習慣病を改善するばかりでなく、睡眠の質を高めたり、認知機能障害(いわゆる痴呆)を予防することがわかっています。それはイヌにとってもきっと同じ。眠りの質を高め、若さと健康を保つために、散歩はとても大切なのです。

イヌたちが昔オオカミだった頃、老化は存在しませんでした。野生動物たちはみな厳しい自然のおきてに従って生きており、「老化」はただちに「死」を意味したからです。しかし、今では家庭で飼われているペットたちに生活習慣病や老化が見られるようになってきています。これはペットが野生の動物ではなくなり、人間と同じ生活環境で暮らしているからにほかなりません。食生活が以前に比べてずっと良くなり、獣医さんたちのお陰で病気になっても治すことができるようになったため、寿命が飛躍的に延びたのです。

ウォーキングのような有酸素運動をした時には、心拍数の上昇や肺の呼吸動態、全身の血液循環量の増加といった身体の変化がみられます。これらの情報は、即座に脳に送られて行きます。そして脳はこれらの情報から「厳しい自然で生きる資格あり」と判断します。つまり、脳は遺伝子に刻みこまれた情報に照らして、お前(イヌです)はまだ狩りや子育てなどの第一線に従事しているのだと判断され、老化のスイッチが押されないですむというわけです。

中年イヌと言ってもイメージがわかないでしょうが、中年から老年になったイヌたちが快適に病気や障害の少ない生活を送ることは、すべてのオーナーたちの望みです。さあペットたちを散歩に連れて行ってください。アンチエイジング・ウォークで、愛犬が元気なるのと一緒に、飼い主のあなたも元気になってしまいましょう。(同志社大学アンチエイジングリサーチセンター教授 米井嘉一)

2006年03月07日

アンチエイジングコラム【11】 [-パルッセ日記]

アンチエイジングの講演ではいつも「老化の仕方は人それぞれ。テーラーメード医療が必要」と言っています。テーラーメードって洋服のことですよね。これまで背広はもっぱら吊るしが専門、お仕立てなんてとんとご無沙汰でした。

たまにはテーラーメード衣料をということで、銀座テーラー(銀座の老舗です!)というお店で採寸してもらいました。「右肩下がりですね」「右手が左手より少し長いです」「ももの筋肉は結構がっしりしていますね」と言われながらメジャーを当てられていると、なんだかドクターの診察を受けている気分になってきます。「下半身の筋肉がしっかりしてきたのはウォーキングの成果です。ほらこの腕時計、万歩計(パルッセ)なんですよ。」と言うと、びっくりした様子。最後には「万歩計が見やすいように、左のお袖を少し短くしておきましょう」ということになりました。どうやらお仕立て背広を着てもウォーキングから離れられない運命のようです。

洋服屋さんと言ってもあなどるなかれ、長年通っている顧客の体型サイズの情報はきっちり把握しており、まるでカルテの如し。加齢にともなって男性の体型(スリーサイズ)がどのように変化してゆくか、重要データの宝庫だったのです。「最近ちょっとウエストが出てきましたね。どうされますか?」「頑張って元にもどすから、キツメにしてくれ」とか、「どのようなお服がお望みですか?」の問いには「若く見える服がいい」「ずばり女の子にもてる服」「気が引き締まる服」「やる気が起こる服」などの答えがかえってくるとか。これぞまさしくアンチエイジングの精神ですね。

これまで女性向けにはエステやコスメなど「いつまでも若く美しくいたい」という欲望を満たすためのアイテムがいくつもありました。勝負下着とかいって、高級な下着をつけると気分が変わるという女性もいます。

しかし、男性向けアイテムは圧倒的に少ない状況でした。なんとかしてテーラーメード衣料をアンチエイジングの土俵の上に載せることはできないか。その後オーナーを交えて熱い談義が始まりました。精神的にくじけそうな時にこそ、びしっとした服を着て自分を鼓舞することが必要です。エレベーターを尻目に平然と階段を昇っている矍鑠(かくしゃく)とした自分の姿をイメージしてみました。

(同志社大学アンチエイジングリサーチセンター教授 米井嘉一)

2005年12月14日

アンチエイジングコラム【10】 [-コンビネーションが大切-有酸素運動・筋肉トレーニング・柔軟体操]

アンチエイジング(抗加齢)を目的とした健康増進のためにお薦めなのは、有酸素運動、筋力トレーニング、柔軟体操をバランスよく行うことです。

有酸素運動とは筋力は弱いが長時間持続できる運動で、歩行、ジョギング、平泳ぎ、サイクリング、ゴルフなどです。エネルギー源としては主に脂肪を燃焼します。
                                                        筋力トレーニングは無酸素運動とも呼ばれ、瞬発力を要する、短時間で強い筋力を発揮させる運動です。わずかな時間しか持続できません。ダンベル体操、短距離の全力疾走、重い物を持ち上げる、けんすいなどです。エネルギー源としてグリコーゲンなどの糖質が消費されます。40歳以上では年間1%、寝たきりになると2、3日で1%の筋肉が衰えます。筋肉量の維持のために、週2回の筋力トレーニングが推奨されます

柔軟体操・ストレッチを毎日おこなって、関節可動域を目いっぱい使いこなしましょう。朝起きたときでも、寝る前でも、5~10分でいいですから、毎日続けてやりましょう。日常生活だけでは、間接の可動域をフルには使っていません。関節は使わないと、だんだん固くなり、動く範囲が狭まります。生活の質を保つためにもストレッチ運動は重要です。

ウォーキングも大切です。喫煙しないハワイ在住日系人男性(68~70歳、707人)を対象にした12年間にわたる追跡調査の結果、よく歩く人(1日2マイル以上、1マイル=約1.6㌔)のグループの死亡率は、あまり歩かない人(1マイル未満)のグループのほぼ半分でした。

日本の国民栄養調査でも、良く動く人ほど心疾患などの罹患(りかん)率ならびに死亡率が低いことが報告されています。また、肥満の解消や血中脂質の改善、高血圧にも効果があります。

私たちの試験成績では、歩く早さは運動強度40~60%がちょうど良いようです。具体的には最大心拍数(おおむね220マイナス年齢)の4~6割の脈拍で歩くこと。

日常生活での歩数は、成人では8000~9000歩、70歳以上では男性が5400~7000歩、女性が4600~5900歩というのが目標値です。加齢にともなって、さまざまな身体的要因が重なると、ますます歩く機会が少なくなってしまいます。筋肉が衰えて歩幅・歩行スピードといった歩行機能が低下すると、それがさらなる身体機能低下をもたらして、ますます歩かなくなるという悪循環に陥ってしまいます。40歳以上の人の運動習慣を分析すると、ほとんど運動しなくなる人が4割、週に2回以上は運動するという人も4割以上あり、「良く運動する人」と「ほとんど運動しない人」に二極化しているようです。「ほとんど運動しない人」は、「歩かなくなる悪循環」から脱却して「歩きの好循環」に仕向けましょう。

普段からウォーキングを続けていれば、筋肉への刺激が保たれて、歩行機能も維持されます。ウォーキングによって、脳内に快適なシグナルが出るようになり、ますます楽しくなってゆくことでしょう。

2005年11月09日

アンチエイジングコラム【09】 [運動のすすめ-生活の質向上に効果]

アンチエイジング(抗加齢)医学で、運動療法は重要です。生活習慣病を例にすると、運動不足により心臓発作が増え、糖尿病、高血圧は悪化することがわかっています。運動することで、体脂肪とコレステロールは減少し、糖尿病、脳梗塞(こうそく)や虚血性心疾患を予防することができます。運動は、がんの予防にも役立つと言われています。

アンチエイジングの立場から補足説明すると、
「骨密度を高める」
「筋肉を増強する」
「筋肉の収縮を予防する」
「ケガを減らす」
「日常の動作を容易にする」
などの作用があり、QOL(生活の質)の向上に役立ちます。
また、
「感情をより安定させる」
「ストレスのコントロールに役立つ」
「睡眠の質を改善する」
など、精神面でもかなりプラス効果があります。。

何よりも大切なことは、運動の習慣が、成長ホルモンや、IGF-Ⅰ(インスリン様成長因子-Ⅰ)、若さと健康を保つために重要なホルモンのDHEA(デヒドロエピアンドロステロン)のレベルを高める働きがあることでしょう。運動量は、多ければ多いほど効果が高いわけではありません。なにごともバランスが重要です。過激なスポーツは、かえって身体にダメージを与え、寿命を縮める可能性があります。実際のところプロのスポーツ選手らは、身体を酷使しすぎる傾向にあります。アンチエイジングを目指す一般の方々には、プロ選手なみの過度な運動は不向きです。
運動するときは、適切な水分補給、栄養対策も同時にすべきでしょう。健康の維持・増進には、運動を生涯続ける生活習慣を身につけることが必要です。

 ハーバード大学卒業生の調査では、卒業後の運動量が多いほど、冠動脈疾患(心筋梗塞、狭心症など)になる危険性が小さくなることがわかりました。運動を続けることで冠動脈疾患予防効果があるのです。しかし、学生時代にスポーツマンだった人が卒業後スポーツをやめると、予防効果がなくなってしまうこともわかっています。

骨粗しょう症は、骨の中のミネラル分が失われ、骨密度が三十-四十歳の平均の七割以下となる状態です。せっかく心臓や肺などが丈夫であっても、骨粗しょう症になると、骨がもろくなり、背骨や股(こ)関節部の骨折の原因になり、寝たきり状態のきっかけになってしまいます。骨粗しょう症を治すことは、QOLを維持するために大切です。

サプリメントによってビタミン・ミネラルを補給したり、性ホルモンを調整することも大事ですが、それだけでは不十分です。実際に運動療法を行って骨に刺激を与えることが大切です。

運動の種類によって、骨密度への影響が異なります。骨に衝撃が加わるような、飛んだり跳ねたりする運動は、骨の血流を増し、骨密度を増す効果が大きくなります。水泳など重力がかからない運動では骨密度が増加しにくくなります。
遺伝子診断や骨密度チェックによって、骨に弱点がある人は、早い年齢から対策を練りましょう。

2005年10月17日

アンチエイジングコラム【08】― [パルッセ日記]

歩くこと(ウォーキング)はもっとも一般的な有酸素運動と言えます。しっかりとした心構えをしてのウォーキングもよし、通勤や移動時に歩くのもよし。そんな日々の積みかさねが身体を怠けさせない秘訣でしょう。僕のウォーキングには欠かせないのがパルッセ。リングをカチッと回してウォーキングモードで歩きます。

これをして心がけているのは次の3つの事項:
①心拍数を適度に上げて運動強度を40~60%に保つこと、
②1日の目標歩数9000歩、
③平均時速4.5km/hを保つこと。

この中では平均時速を保つのが結構きついです。普段ならば奈良県橿原市の家から駅まで往復2600歩、JR同志社駅前から大学研究室までの往復4200歩、あとは美しい京田辺キャンパス内を歩けば1万歩はなんなく達成できます。20歳前後の若い学生の刺激を受けてキャンパスライフはいたって健康的。正門に至る坂道だってゴホゴホいいながらタバコ吸っている学生なんかガンを飛ばして軽がる追い越しちゃいます。それに較べて都会は実に歩きにくい。人ごみや路上の障害物、信号に車に自転車あり。かきわけかきわけ歩きます。連続して10分以上のリズムにのった気分よいウォーキングはなかなか望めません。東京もつらいけど、土地勘のない大阪はもっとつらいですね。

本日は名古屋で会議。道は少し余裕がある感じ。秋はウォーキングにも良い季節です。タクシーの誘惑を振り切り地下鉄も一駅歩いて、なんとか目標を達成しました。そんな日は自分へのご褒美が欠かせませんね。夕食に何を食べようか?「美味しいものをいただくのではなく、おいしくいただくことが大切」と自分に言い聞かせて、選んだのは名古屋コーチン。鶏肉がヘルシーとか、そんなことはすっかり忘れ、「おいしいものはヘルシーなのだ」と考える。コーチン肉の味を最大に引き出すこつはとにかく良く噛むこと。あとは気の合った仲間とチョッピリだけアルコールを…。Happy! だから明日もアンチエイジング・ウォークを目指します。
(同志社大学アンチエイジングリサーチセンター教授 米井嘉一)

2005年09月29日

アンチエイジングコラム【07】― [-アンチエイジング(老化度判定)ドック-各年代の最善を目指す]

自分自身の加齢度を客観的に評価することは、抗加齢(アンチエイジング)医学を実践する上で大切な第一歩です。その観点から提唱している「アンチエイジング(老化度判定)ドック」は、加齢や老化を病気として考え、一連の検査で早期発見・予防をし、そして少しくらい衰えた部分は治してしまおうというのが目的です。老化や加齢の現象はこれまで避けがたいものと考えられてきましたが、病気であるならば治るはずだという発想です。
老化の兆しの現れ方は年齢によって異なります。四十代、五十代、六十代にとっては、いまだゆっくりとした形態をとるでしょう。しかし、八十代、九十代の方にとって老化はきわめて急激に訪れます。

「アンチエイジング(老化度判定)ドック」では、通常の人間ドック検査項目のほかに、体脂肪検査、骨年齢(骨密度の精密測定)、血管年齢(動脈硬化度検査)、基礎代謝検査、ホルモン年齢(血管中のホルモン測定)が加わります

このドックの結果を評価し、受診者にアドバイスするにあたって「オプティマルヘルス(最善の健康)」という考え方が重要です。これは、それぞれの年齢において心も身体ももっともイキイキとした理想的な健康状態を意味します。それぞれの年齢で健康状態をランキング付けするとすれば、以上10%以内の方と考えていただければ分かりやすいでしょうか。三十代なら三十代として最善の健康を維持し、四十代は四十代のベストの健康状態を目指すわけです。五十代、六十代、七十代、八十代、九十代に人も同様です。

六十代、七十代になって、がんにならず、ボケることもなく最高の健康状態を保つためには、三十代、四十代の若いころから努力すべきです。若いころからの努力の結果として高齢期があるわけですから、高齢になっていきなり健康になるのは無理というものです。
血液検査の結果についても、正常範囲とは考えの異なる、最善値(オプティマルレンジ)という考え方をとります。一般的には、検査値が正常範囲を超えれば、病的範囲に入ることになります。最善値とは、それぞれの年齢において心も身体ももっとイキイキとした「最善の健康」状態を保つために、目標とすべき検査値です。たとえ検査結果が標準範囲に入っていたとしても「それでは不十分、もっといい状態(最善値)を目指しましょう」と指導します。

私が以前勤務していた日本鋼管病院(神奈川県川崎市)は、全国に先駆けてこの新しい医療テクニックを取り入れました。これらの結果に基づいて、次のような指導をしています。
①食事指導では、サプリメントに関するアドバイスを合わせて行います。
②運動指導では、スポーツジムの利用ばかりでなく、筋肉トレーニングなどの無酸素運動、ウオーキングなどの有酸素運動、柔軟体操のバランスを重視します。
③健康、疾患は心身が相関して発言しますので、心理指導の必要な人は意外に多く、ストレス解消の仕方などアドバイスします。

検査項目の中で最善値から最も大きくはずれているものが、その人の弱点が生じると、ほかの良い部分にも悪影響を及ぼすので、まずは弱点を是正して全体のバランスをとることが大切です。このようにして、受診者が健康長寿を達成できるようにアドバイスをしています。

2005年08月11日

アンチエイジングコラム【06】― [病の宝庫 中年太り- 40代前半で心筋梗塞も

何万年もの間、人類は厳しい自然と向き合って生きてきました。そのため、人間には飢餓という事態へ対抗して生きのびるためにさまざまなシステムが発達しています。例えば、食いだめ。たまにしか手に入らない食料を食べた時には、エネルギーを一時的に脂肪として蓄え、エネルギーを少しずつ使って次の獲物が手に入るまで耐え忍ぶのです。
しかし現在のような飽食の時代には、この脂肪代謝のシステムが異常をきたしてしまいます。例えば肥満。それは体内に過剰な脂肪が蓄積された状態ですが、脂肪の中でも、特に中年太りのような内臓脂肪はさまざまな病気を引き起こす引き金になるのです。内臓脂肪は、普通の皮下脂肪と異なり、脂肪合成や分解活性がより高く、遊離した脂肪酸が門脈を介し直接肝臓へ流入しやすい特徴があります。すなわち脂肪肝になりやすい状態です。
食事からとったブトウ糖や脂肪分は、肝臓で代謝されて遊離脂肪酸やグリセロールになって、血液の流れに乗って脂肪組織の脂肪細胞に取り込まれます。脂肪細胞は脂肪を取りこみ、もう満杯になったサインとしてレプチンというホルモンを分泌します。レプチンが血管を通って、脳内の視床下部に到達すると、食欲をコントロールする司令塔である満腹中枢が刺激を受け、食欲を低下させます。また脂肪組織にも作用しエネルギー代謝の増大を促します。このような仕組みによって、ヒトは身体の脂肪量を一定に保っています。これが正常な状態でのレプチンの働きです。

肥満のあるヒトの95%に高レプチン血症がみられます。このような状態は「レプチン抵抗性」と呼ばれ、レプチンが分泌されて信号が出ていてもそのシグナルが受け取れない状態です。その原因は極めて多様で、レプチンの受容体に異常が発生している人もいれば、細胞内のシグナル伝達がうまくいかない人もいます。肥満のような病的状態では、レプチンの悪い側面ばかりが現れてきます。一般的には、40歳以後で、加齢とともに血中レプチン濃度は上昇していく傾向にあるようです。舌における味覚についても、レプチンが高いと甘味感受性が低下して、甘味が感じにくくなります。結局のところ、甘いものでもそれほど感じることなく、どんどん食べてしまい、レプチンの指令になれっこになってしまった満腹中枢は、食べても食べても食欲を減らそうという命令を出さないようになります。かくして肥満はますます助長するというわけです。骨からカルシウムが抜けてスカスカになる骨粗しょう症も、レプチンが多いと進行してしまいます。しばしば疲労感を訴えることを特徴とする慢性疲労症候群の患者においても、血中レプチン濃度は高いようです。疲労感とも関連があるかもしれません。

レプチンが高いと、血糖値を制御するホルモンであるインスリン抵抗性が上昇して、インスリン作用を発揮しにくくなります。糖尿病状態になりやすくなるわけです。副腎皮質ホルモンのコルチゾルも、身体におけるレプチン抵抗性・インスリン抵抗性をあげる作用があります。レプチン、インスリン、コルチゾルは、必要以上に分泌されると、互いに助長しあって、加齢や老化を促進させてしまうのです。高血圧、高脂血症、内臓肥満、糖尿病を合併すると、動脈硬化が30代から急速に進展し、40代前半で心筋梗塞や脳卒中が起きてしまいます。これが「シンドロームX」とか「死の四重奏」とも呼ばれ、きわめて危険な病態です。中年太りを甘く見ないでください。それは病気の宝庫ですから。

2005年07月19日

アンチエイジングコラム【05】― [病気と自然治癒力- 明日があるさと考えて

精神活動が正常に営まれていれば、健康は維持され、たとえ病気になっても回復することがあります。私たちはこうした回復力のことを「自然治癒力」とか「恒常性」と呼んで、昔から、治療に役立てようとしてきました。なぜなら、精神活動の失調が大きければ、病状はさらに悪化することを臨床的に知っていたからです。
昔から「病は気から」と言われます。今では、キャッチフレーズは「病は気から、老化も気から」となっています。これは、医師として無責任な言葉では決してありません。「病は気から」のメカニズムを医学的に解明しようとする医学は、精神神経免疫学と呼ばれています。精神神経免疫学は、ストレスを中心とした精神的な動きと、からだを守る免疫機能の関係や、心と体が関連しておこる「心身相関病」のメカニズムを明らかにしようとするあたらしい医学です。
たとえば、ペンシルベニア大学のセリグマン博士が行った実験では、強度のストレスや、先の見えない、希望が持てない環境が免疫機能に致命的なダメージを与え、がんに対する体の抵抗力を劇的に弱めるということが確かめられています。抗加齢医学(アンチエイジング医学)では、
■心の調和がとれた状態(怒り、喜び、憂い、恐れ、哀しみの感情のバランス)
■ストレスをうまく逃がした状態
■前向きでポジティブな心の状態(「明日があるさ」「次の恋人がいるさ」といった精神的なはげみや希望をもつこと)

が特に重要であると考えています。
実際に、健康長寿の人たちを調べてみると、精神面で特徴があることがわかります。百歳を超えて、ボケもなく、がんもなく、健康で自立した生活を送っている人たちのことを百寿者と呼びます。何万人の規模で調べてみると、百寿者の人たちは概して「前向きな考え方」をすることが多く、また「ストレスに強い」と言われています。また、恋をしたり、友情を大切にしたりしています。人間いくつになってもコミュニケーションは大切なのです。
抗加齢医学の中では、この精神面の部分が医学的評価を一番しにくいところです。しかし、数ある生活療法の中でも、この精神面の部分はもっとも大切です。それは生きる気力であり、精神(スピリット)です。とにかく「自分は120歳まで、健康で元気に生きるのだ」と声に出して言ってみてください。自分が健康で元気に生きる姿を頭に思い浮かべてください。それが精神療法の基本なのですから。
ここでも男性と女性の意識の差が大きく感じられることがあります。それは女性がいくつになっても、肌や髪などの見かけを若く美しく保ちたいという強い願望があることです。これは生きることへの強い意欲です。男性にはまったく欠けていると言えます。
講演会の後での質問コーナーでも、積極的に質問するのは圧倒的に女性が多いです。内容は科学的なことよりも、自分の生活に密着した内容が中心です。少しでも知識を得て、自分の生活を改善させようという強い意欲が感じられるのです。
このことも男性と女性の平均寿命の差につながっているような気がします。