2005年03月18日

アンチエイジングコラム[03] 内分泌の変化―ホルモン分泌の減少によって『しぼむ』

実年齢を重ねるにしたがって、体内のホルモン分泌が減少してゆきます。メラトニン、DHEA、成長ホルモンやインスリン様成長因子(IGF-I)、女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)、甲状腺ホルモンなど、若さと健康を保つために必要なホルモンは、平均的に30歳をこえるころから減りはじめます。そしてこれらのホルモンの分泌がある一定レベル下回ると、さまざまな症状が現れてきます。
例えば女性ホルモンのエストロゲンは、血管、脳、肌、骨密度の若さを保つ働きがあり、女性の健康長寿に深く関係のあるホルモンです。このホルモンの減少によって、更年期障害と呼ばれる、ほてり、のぼせ、動悸、骨粗しょう症、不眠などの症状をもたらせます。
ところで多くの人の場合、20歳のころは何を食べても太らない身体だったかもしれませんが、40歳近くになると、何を食べても太る身体に変わってしまいます。それは身体の代謝機能が若者モードから、おじさん・おばさん・高齢者モードに変化するからです。人の一生を四季にたとえて、それぞれを「春モード」と「秋モード」と呼ぶことにします。
それでは、ある症例から、春モードから秋モードに変化する過程での、ホルモンの役割を見てみましょう。

〈症例〉
39歳男性、会社員。最近、なんだか目が疲れる、頭痛が多く、肩こりがひどくなってきた。どうしたのだろう。最近はやりの男性更年期なのだろうか。そう言えば最近精力も衰えたようだ。人間ドックで検査をしても、まったく異常はない。もしかして頭が原因か?脳ドックに入って、MRI検査で脳下垂体を調べる。やはりそうだった。診断は下垂体腫瘍(しゅよう)。脳下垂体からはさまざまなホルモンが分泌される。下垂体腫瘍もときにはホルモンを大量に分泌することがあるが、今回はホルモンを産生しないタイプの腫瘍で、手術により切除した。

人間のからだは、普段の生活の中で、温度、明るさ、睡眠、身体活動、性的活動などの情報を感覚器官で感知して、それらの情報は統合されて脳に送られます。
そして、それらの情報を受けて、脳にある視床下部は下垂体を経由して、全身の臓器や器官に向かって、ホルモン分泌という方法で、的確に指令を送っているのです。
もしも下垂体機能や下垂体ホルモンが欠乏すると、症例のような、いろいろな症状が現れてきます。「なんとなく疲れやすい」という体力・運動能力の低下、「精神的な意欲や性的な感情、想像力の低下」という精神活動の低下、眠りの質の低下、免疫力・抵抗力の低下、骨密度の低下、肌の変化、体脂肪の増加、筋肉の衰えなどです。
具体的には、すぐに疲れる、疲労が抜けない、ときめきがなくなった、集中力やまさに老化そのものです。
下垂体ホルモンの分泌は、視床下部からの命令によって、調節されています。それが意味することは、普段の生活態度が大変重要だということです。もちろん、加齢とともにホルモンの分泌は少しずつ衰えてゆきます。それは、老化のプログラムのスイッチが「オン」になったことを意味します。しかし、悪い生活習慣や食習慣をそのままにしておくと、こうした重要なホルモンの分泌低下は、さらに早まってしまうのです。
ですから、ウオーキングなどの運動、高タンパク食、野菜・海藻などの抗酸化食品の積極的な摂取、ストレス対策をすることによって質の良い睡眠を得ることなどの良い生活習慣や食習慣に改善することが、自己のホルモン分泌能力を低下させないためには大切なのです。

アンチエイジングコラム[02] 健康長寿の決め手 重要な生活・環境因子

私は現在、神奈川県川崎市にある日本鋼管病院で、人間ドック・脳ドック室部長を務めています。専門は消化器内科で、一般の勤務医として診療もしています。
みなさんご存じのとおり、日常の外来診療や人間ドックにはさまざまな患者さんがいらっしゃいます。老若男女、30代の女性もいれば、90歳を越える男性もおり、それぞれが千差万別な症状を訴えて、病院に来られます。重大な病気が発見される患者さんや生活習慣病の治療にいらっしゃる患者さんもいる一方、「最近、どうも眠りが浅い」とか「疲れやすい」「気力がわかない」「腰がおもい」「物忘れをするようになった」という軽微な症状や愁訴感を訴え、検査をしても特段の異常はみつからずに、単に「年ですね」と言わざるを得ないケースもかなり多いのです。
しかし私は、この「年ですね」という言葉をどうしても口にしたくありませんでした。DNA構造から推測される人間の生物学的寿命が125年余りあるにもかかわらず、その半分を費やしただけの患者さんに対し、「加齢」や「老化」という都合のよい理由を掲げて、現状維持を上限に回復もしくは改善をあきらめていただくことは医師としてフェアな態度ではないと考えたのです。何か良い療法はないだろうか...。それから情報収集、勉強を始めました。その結果行き着いたのが、抗加齢(アンチエイジング)医学だったのです。

抗加齢医学とは、ありとあらゆる科学を結集して、加齢のメカニズムを追究し、今まで避けることが難しいとされてきた老化に立ち向かう学問です。単に数字としての寿命を延ばすのではなく、寝たきりや、ボケを避け、がんを予防しながら、生活の質を高く保った上で、健康にハッピーに暮らしていこうというわけです。なんだか虫のよい話ですが、ここは乗らない手はありません。
日本人の平均寿命は世界一です。女性は85.2歳、男性は78.3歳。女性の方が寿命が長いことは明らかですが、過去30年間をみると、平均寿命の伸び率は女性の方が高いのです。つまり寿命の男女差は今でも開く一方です。その理由として考えられることは、男性と女性との身体構造上大きな違いがあることです。それは女性だけが子供を産むことができることと深く関係しています。子宮や卵巣といった女性特有の身体構造がありますが、エストロゲンやプロゲステロンといった女性特有のホルモンにも、長寿の秘密があります。
男女の性別は、もって生まれたもの。変えることができない体質的な素因としましょう。

健康長寿を達成できるかどうかの決め手は、大きく2つの要素があります。まずどうしても体質的に恵まれている人がいることは事実です。親が長寿なら子も長寿のチャンスが増えます。しかしそれでは、そういった体質的な素因のない人は健康長寿を達成することができないのでしょうか。答えは否です。すべて体質で決まるわけではありません。体質以外にも、生活因子や環境因子が重要であり、いかに体質的な素因のある人でも、不摂生をすれば健康を害して、早死にすることは明らかです。
このコラムでは、抗加齢医学という新しい医学を紹介するとともに、中年から壮年期の人たちが健康長寿を達成できるように、なるべく分かりやすくアドバイスしてみたいと思います。

アンチエイジングコラム[01] アンチエイジングとは

目指すは、生活の質の向上と健康長寿

アンチエイジング(抗加齢医学)とは、老化や加齢を病気として考え、ありとあらゆる科学を結集してそのメカニズムを究明し、その病的変化を治療してしまおうという考え方の医学です。
そのために老化の程度を診断し、生活療法やサプリメント療法、抗酸化療法、薬物療法を駆使して治療を行います。決して不老長寿を目指しているわけではありません。

アンチエイジングがめざすのは生活の質(Quality of Life)の向上と健康長寿。さらに具体的に言えば、ボケないこと、寝たきりにならないことです。皆さんが健康長寿でいられれば、高齢化社会もちっとも怖くありません。

身体が全体均質に老化をしていくことが重要

皆さんは百寿者という言葉を聞いたことがありますか?

百寿者とは、百歳を越えても、ボケもなく、寝たきりでもなく、ガンもなく、健康で自立した暮らしをしている方々のことです。百寿者についての大規模な調査の結果、「みんな前向きな考え方をしている」「極端な肥満者がいない」などいくつかの共通点がみられます。
しかし、百寿者の方が特別に老化の速度がおそいわけではありません。百寿者は、身体全体が均質に老化していて、バランスが良く、弱点が非常に少ないことが重要なポイントです。

多くの方々が、40代50代でなんらかの弱点が現れ、それがどんどん大きくなって、病気を引き起こし、致命的となり脱落してゆきます。それぞれの弱点を早めに見つけて、それを重点的に注意して、克服していけば、病気の予防になり、健康長寿を達成することができるでしょう。自分のライフスタイルに弱点がないかどうか、皆さんも考えてみましょう。アンチエイジング(老化度判定)ドックなどで弱点を見つけてもらうのがもっとも確実な方法です。

アンチエイジングの基本は生活習慣の改善

日本人の生存曲線は過去2000年の間に大きく推移してきました。世界一の長寿国である日本は、最終的な円熟期の生存曲線にもっとも近いと言われています。

しかし私たちのライフスタイルには、健康長寿の達成を妨げている悪しき生活習慣があります。それは運動不足、肥満、悪しき食習慣、ストレス、睡眠障害、喫煙です。これらの要因について理解を深め、食事・運動療法などの生活療法を実践することが、アンチエイジングの基本なのです。