アンチエイジングコラム[02] 健康長寿の決め手 重要な生活・環境因子
私は現在、神奈川県川崎市にある日本鋼管病院で、人間ドック・脳ドック室部長を務めています。専門は消化器内科で、一般の勤務医として診療もしています。
みなさんご存じのとおり、日常の外来診療や人間ドックにはさまざまな患者さんがいらっしゃいます。老若男女、30代の女性もいれば、90歳を越える男性もおり、それぞれが千差万別な症状を訴えて、病院に来られます。重大な病気が発見される患者さんや生活習慣病の治療にいらっしゃる患者さんもいる一方、「最近、どうも眠りが浅い」とか「疲れやすい」「気力がわかない」「腰がおもい」「物忘れをするようになった」という軽微な症状や愁訴感を訴え、検査をしても特段の異常はみつからずに、単に「年ですね」と言わざるを得ないケースもかなり多いのです。
しかし私は、この「年ですね」という言葉をどうしても口にしたくありませんでした。DNA構造から推測される人間の生物学的寿命が125年余りあるにもかかわらず、その半分を費やしただけの患者さんに対し、「加齢」や「老化」という都合のよい理由を掲げて、現状維持を上限に回復もしくは改善をあきらめていただくことは医師としてフェアな態度ではないと考えたのです。何か良い療法はないだろうか...。それから情報収集、勉強を始めました。その結果行き着いたのが、抗加齢(アンチエイジング)医学だったのです。
抗加齢医学とは、ありとあらゆる科学を結集して、加齢のメカニズムを追究し、今まで避けることが難しいとされてきた老化に立ち向かう学問です。単に数字としての寿命を延ばすのではなく、寝たきりや、ボケを避け、がんを予防しながら、生活の質を高く保った上で、健康にハッピーに暮らしていこうというわけです。なんだか虫のよい話ですが、ここは乗らない手はありません。
日本人の平均寿命は世界一です。女性は85.2歳、男性は78.3歳。女性の方が寿命が長いことは明らかですが、過去30年間をみると、平均寿命の伸び率は女性の方が高いのです。つまり寿命の男女差は今でも開く一方です。その理由として考えられることは、男性と女性との身体構造上大きな違いがあることです。それは女性だけが子供を産むことができることと深く関係しています。子宮や卵巣といった女性特有の身体構造がありますが、エストロゲンやプロゲステロンといった女性特有のホルモンにも、長寿の秘密があります。
男女の性別は、もって生まれたもの。変えることができない体質的な素因としましょう。
健康長寿を達成できるかどうかの決め手は、大きく2つの要素があります。まずどうしても体質的に恵まれている人がいることは事実です。親が長寿なら子も長寿のチャンスが増えます。しかしそれでは、そういった体質的な素因のない人は健康長寿を達成することができないのでしょうか。答えは否です。すべて体質で決まるわけではありません。体質以外にも、生活因子や環境因子が重要であり、いかに体質的な素因のある人でも、不摂生をすれば健康を害して、早死にすることは明らかです。
このコラムでは、抗加齢医学という新しい医学を紹介するとともに、中年から壮年期の人たちが健康長寿を達成できるように、なるべく分かりやすくアドバイスしてみたいと思います。

