アンチエイジングコラム【05】― [病気と自然治癒力- 明日があるさと考えて
精神活動が正常に営まれていれば、健康は維持され、たとえ病気になっても回復することがあります。私たちはこうした回復力のことを「自然治癒力」とか「恒常性」と呼んで、昔から、治療に役立てようとしてきました。なぜなら、精神活動の失調が大きければ、病状はさらに悪化することを臨床的に知っていたからです。
昔から「病は気から」と言われます。今では、キャッチフレーズは「病は気から、老化も気から」となっています。これは、医師として無責任な言葉では決してありません。「病は気から」のメカニズムを医学的に解明しようとする医学は、精神神経免疫学と呼ばれています。精神神経免疫学は、ストレスを中心とした精神的な動きと、からだを守る免疫機能の関係や、心と体が関連しておこる「心身相関病」のメカニズムを明らかにしようとするあたらしい医学です。
たとえば、ペンシルベニア大学のセリグマン博士が行った実験では、強度のストレスや、先の見えない、希望が持てない環境が免疫機能に致命的なダメージを与え、がんに対する体の抵抗力を劇的に弱めるということが確かめられています。抗加齢医学(アンチエイジング医学)では、
■心の調和がとれた状態(怒り、喜び、憂い、恐れ、哀しみの感情のバランス)
■ストレスをうまく逃がした状態
■前向きでポジティブな心の状態(「明日があるさ」「次の恋人がいるさ」といった精神的なはげみや希望をもつこと)
が特に重要であると考えています。
実際に、健康長寿の人たちを調べてみると、精神面で特徴があることがわかります。百歳を超えて、ボケもなく、がんもなく、健康で自立した生活を送っている人たちのことを百寿者と呼びます。何万人の規模で調べてみると、百寿者の人たちは概して「前向きな考え方」をすることが多く、また「ストレスに強い」と言われています。また、恋をしたり、友情を大切にしたりしています。人間いくつになってもコミュニケーションは大切なのです。
抗加齢医学の中では、この精神面の部分が医学的評価を一番しにくいところです。しかし、数ある生活療法の中でも、この精神面の部分はもっとも大切です。それは生きる気力であり、精神(スピリット)です。とにかく「自分は120歳まで、健康で元気に生きるのだ」と声に出して言ってみてください。自分が健康で元気に生きる姿を頭に思い浮かべてください。それが精神療法の基本なのですから。
ここでも男性と女性の意識の差が大きく感じられることがあります。それは女性がいくつになっても、肌や髪などの見かけを若く美しく保ちたいという強い願望があることです。これは生きることへの強い意欲です。男性にはまったく欠けていると言えます。
講演会の後での質問コーナーでも、積極的に質問するのは圧倒的に女性が多いです。内容は科学的なことよりも、自分の生活に密着した内容が中心です。少しでも知識を得て、自分の生活を改善させようという強い意欲が感じられるのです。
このことも男性と女性の平均寿命の差につながっているような気がします。

