アンチエイジングコラム【11】 [-パルッセ日記]
アンチエイジングの講演ではいつも「老化の仕方は人それぞれ。テーラーメード医療が必要」と言っています。テーラーメードって洋服のことですよね。これまで背広はもっぱら吊るしが専門、お仕立てなんてとんとご無沙汰でした。
たまにはテーラーメード衣料をということで、銀座テーラー(銀座の老舗です!)というお店で採寸してもらいました。「右肩下がりですね」「右手が左手より少し長いです」「ももの筋肉は結構がっしりしていますね」と言われながらメジャーを当てられていると、なんだかドクターの診察を受けている気分になってきます。「下半身の筋肉がしっかりしてきたのはウォーキングの成果です。ほらこの腕時計、万歩計(パルッセ)なんですよ。」と言うと、びっくりした様子。最後には「万歩計が見やすいように、左のお袖を少し短くしておきましょう」ということになりました。どうやらお仕立て背広を着てもウォーキングから離れられない運命のようです。
洋服屋さんと言ってもあなどるなかれ、長年通っている顧客の体型サイズの情報はきっちり把握しており、まるでカルテの如し。加齢にともなって男性の体型(スリーサイズ)がどのように変化してゆくか、重要データの宝庫だったのです。「最近ちょっとウエストが出てきましたね。どうされますか?」「頑張って元にもどすから、キツメにしてくれ」とか、「どのようなお服がお望みですか?」の問いには「若く見える服がいい」「ずばり女の子にもてる服」「気が引き締まる服」「やる気が起こる服」などの答えがかえってくるとか。これぞまさしくアンチエイジングの精神ですね。
これまで女性向けにはエステやコスメなど「いつまでも若く美しくいたい」という欲望を満たすためのアイテムがいくつもありました。勝負下着とかいって、高級な下着をつけると気分が変わるという女性もいます。
しかし、男性向けアイテムは圧倒的に少ない状況でした。なんとかしてテーラーメード衣料をアンチエイジングの土俵の上に載せることはできないか。その後オーナーを交えて熱い談義が始まりました。精神的にくじけそうな時にこそ、びしっとした服を着て自分を鼓舞することが必要です。エレベーターを尻目に平然と階段を昇っている矍鑠(かくしゃく)とした自分の姿をイメージしてみました。
(同志社大学アンチエイジングリサーチセンター教授 米井嘉一)

