アンチエイジングコラム【12】 [-パルッセ日記]
大学の今出川キャンパスへ向かう途中、僕はよく京都御所を通り抜けます。4月に見事な花を見せてくれたしだれ桜も、今はすっかり普通の木のフリをしています。初夏の京都はとても気持ちがいいですね。御所の公園でイヌを散歩させているおじさんを見かけました。それもぶらぶらとした「イヌも歩けば棒にあたる」スタイルではなく、たったかたったかリズムよく「健康ウォークやってるぞ」という感じ。イヌもしり尾をピンと立て心なし得意げに歩いています
今年はイヌ年、年男の僕はペットのアンチエイジングの本を出版しました。あのおじさんのように愛犬と一緒にウォーキングするのは実に理想的なこととして取り上げています(『愛犬を元気で長生きさせる育て方』 PHP研究所刊)。
人間での研究の結果、ウォーキングやエアロビクスなどの有酸素運動は、糖尿病などの生活習慣病を改善するばかりでなく、睡眠の質を高めたり、認知機能障害(いわゆる痴呆)を予防することがわかっています。それはイヌにとってもきっと同じ。眠りの質を高め、若さと健康を保つために、散歩はとても大切なのです。
イヌたちが昔オオカミだった頃、老化は存在しませんでした。野生動物たちはみな厳しい自然のおきてに従って生きており、「老化」はただちに「死」を意味したからです。しかし、今では家庭で飼われているペットたちに生活習慣病や老化が見られるようになってきています。これはペットが野生の動物ではなくなり、人間と同じ生活環境で暮らしているからにほかなりません。食生活が以前に比べてずっと良くなり、獣医さんたちのお陰で病気になっても治すことができるようになったため、寿命が飛躍的に延びたのです。
ウォーキングのような有酸素運動をした時には、心拍数の上昇や肺の呼吸動態、全身の血液循環量の増加といった身体の変化がみられます。これらの情報は、即座に脳に送られて行きます。そして脳はこれらの情報から「厳しい自然で生きる資格あり」と判断します。つまり、脳は遺伝子に刻みこまれた情報に照らして、お前(イヌです)はまだ狩りや子育てなどの第一線に従事しているのだと判断され、老化のスイッチが押されないですむというわけです。
中年イヌと言ってもイメージがわかないでしょうが、中年から老年になったイヌたちが快適に病気や障害の少ない生活を送ることは、すべてのオーナーたちの望みです。さあペットたちを散歩に連れて行ってください。アンチエイジング・ウォークで、愛犬が元気なるのと一緒に、飼い主のあなたも元気になってしまいましょう。(同志社大学アンチエイジングリサーチセンター教授 米井嘉一)

