アンチエイジングコラム【14】~ロハスな時代背景
高度成長の時代というのは、1960、1970年代の頃を指すのでしょうか。工業化が進み、大量生産、大量消費で日本の国民は便利さと豊かさを手に入れることができました。世界中の先進諸国で同じような現象が起きていました。公害や環境汚染が大きな社会問題なったのもこの頃のことです。人びとのウォーキング時間も減ってきました。有機水銀による水俣病、四日市をはじめ石油コンビナート工場地帯の大気汚染による喘息、東京の光化学スモッグ、田子の浦のヘドロ公害、PCBによる水質汚染、酸性雨、六価クロムによる土壌汚染、赤潮による被害・…、これまではなかった現象です。
人間が健康に生きてゆくために必要なもの。それはきれいな空気と水、そして安全な食べ物です。健康な足腰があれば、好きなところへ行くことができます。農産物は安全な土壌と雨水から育まれ、魚にはきれいな海、川、湖が必要です。空気も水も土も汚れ果ててしまっては、そして足腰が弱ってしまっては、健康なハッピーライフが遠のいてしまうでしょう。
1990年代頃になり、国や大企業はようやく深刻な環境汚染の問題に対して、国際的に取り組むようになりました。企業人や研究者の間で、地球環境をいつくしみ、自然と向き合いながらその偉大なる恩恵を将来にわたり持続的に享受してゆこうという考えが芽生えてきました。宇宙船地球号の考え方あり、稀少動植物の絶滅を防ぐ種の多様性を守る運動あり、地球温暖化を防ぐためのCO2排出協定あり、有機減農薬運動あり、大なり小なりの様々な運動が地域や国や地球規模で行われるようになりました。
このような時代背景の中で、一般の人たちに何ができるのか、一般企業として何ができるのか。とにかく少しでも良いことを実践していこうという一人一人のライフスタイルが、LOHAS = Lifestyles of Health and Sustainabilityという名の下に集まってきたのだと思います。
健康長寿と生活の質(QOL;Quality Of Life)の向上が目的にアンチエイジングは基本的には医学であるので、ロハスという文化的ムーブメントまったくイコールというわけではありません。しかしアンチエイジング医療では生活習慣の改善の要素が多く、ロハスの目指すライフスタイルと共通する部分が多いのは確かです。
ウォーキングについては社団法人日本ウォーキング協会が中心に「歩け歩け運動」を推進しています。なんと言ってもウォーキングはCO2排出ゼロですから、車社会の見直しを含めウォーキングはとってもロハスです。また前回紹介した(NPO)ローハスクラブでは、①環境家計簿-暮らしのCO2チェック、②ロハス環境の森プロジェクト、③ロハスエコツーリズムをテーマに取り上げています。環境家計簿-暮らしのCO2チェックとは、地球温暖化の原因となるCO2の排出を、家庭で「環境家計簿」をつけて、草の根レベルでCO2排出量削減に協力しようというものです。ロハス環境の森プロジェクトとは、先ほどと同じくCO2排出量を減らすために、森林で植樹活動を行う運動です。ロハスエコツーリズムでは、国内外の森林や里山へのエコツアー、風力発電の見学や温泉療法の体験などを目指しています。これらの運動は環境医学の観点からも理にかなっているので、多くの人たちがこのような問題に関心を寄せ、限りある地球資源を守るためのライフスタイル改善運動に参画して欲しいと思います。
同志社大学アンチエイジングリーサーチセンター教授
米井嘉一

